鋳造 溶接 欠陥 違いとは、成形方法と欠陥の成り立ちが根本的に異なる点だ。鋳造欠陥は溶融金属の凝固過程で内部に生じるのに対し、溶接欠陥は母材と溶加材の溶融・凝固境界で発生する。同じ「金属の欠陥」という言葉で括られがちだが、発生メカニズム・検査方法・補修手順はまったく別物である。

主要データ

  • JIS/WES溶接技能者評価試験 受験者数:104,035人(日本溶接協会、2022年)
  • 同試験 合格者数:80,896人(合格率77.75%、日本溶接協会、2022年)
  • 受験者内訳:手溶接33,486人/半自動43,694人/ステンレス鋼21,656人(日本溶接協会、2022年)

厚板の鋳鋼製フレームに補強材を溶接で取り付けたところ、X線検査で内部に空洞が見つかり、溶接工は「溶け込み不足を起こした覚えはない」と言い、検査担当は「ブローホールにしては位置が深すぎる」と首をかしげるという行き違いは珍しくない。結論を先に置けば、この空洞は溶接欠陥ではなく鋳造時に母材内部へ残っていた巣であり、鋳造欠陥と溶接欠陥を同じ枠で扱うと、原因追究も補修方針も初手からずれやすい。

鋳造欠陥と溶接欠陥は成形プロセスで線引きできる

鋳造欠陥は、金属を溶かして型に流し込み凝固させる鋳造プロセスで生じる不具合を指し、代表的なものに鋳巣(ガス巣・引け巣)、湯境、介在物、割れがあり、溶融金属が型内を流れる間に巻き込んだガスや凝固収縮によって生じた空洞が鋳造品の内部に残る。 一方の溶接欠陥は、母材同士を溶融・凝固させて接合する溶接プロセスで発生する不良であり、溶け込み不足、ブローホール、スラグ巻込み、アンダーカット、割れなどが該当し、発生の場は溶接金属と母材の境界、あるいはその近傍にほぼ限定される。 溶接は「既存の母材に新しい金属を付加する」作業であり、鋳造のように全体を一度溶かすわけではない。ここが出発点だ。 この差は欠陥の位置に表れやすく、鋳造欠陥は鋳物本体の内部や表面に分散して存在し、溶接ビードから離れた場所にも現れるのに対し、溶接欠陥は溶接線に沿って、あるいは溶接金属と母材の境界である融合線付近に集中するため、X線透過試験で母材中央部に空洞が見つかれば鋳造欠陥、ビード直下にあれば溶接欠陥とみる整理が実務では有効となる。

鋳造欠陥の種類とメカニズム

鋳巣は鋳造欠陥の代表格であり、ガス巣は溶湯中に溶け込んだ水素・窒素・酸素が凝固時に気泡として残ったもので丸い空洞として現れ、引け巣は凝固収縮によって生じる空洞で、最後に凝固する部分、たとえば押湯から遠い箇所や肉厚の変化点に発生しやすい。 見た目は似ても、成り立ちは異なる。 湯境は溶湯の流れが合流する際に酸化皮膜が挟まれて生じる線状の欠陥であり、鋳込み温度が低い場合、型の通気性が悪い場合、流路設計が不適切な場合に出やすく、介在物は溶湯中に混入した砂・スラグ・酸化物が鋳物内部に残ったもので、機械加工中に刃物を傷める原因にもなる。 鋳造割れは凝固収縮の拘束によって生じ、肉厚が急激に変化する部分や冷却速度の差が大きい箇所に出やすく、高炭素鋼や合金鋳鉄では熱応力が増しやすいため、同じ割れでも圧延材の溶接割れとは前提条件がかなり異なると見ておく必要がある。

溶接欠陥の種類と発生要因

溶け込み不足は、母材と溶接金属の融合が不十分な状態を指し、開先角度が小さい、電流が低い、運棒速度が速すぎるといった条件で発生し、溶接線に沿って未溶着部が残るため、継手の引張強度を大きく落とす要因となる。 ブローホールは溶接金属中に気泡が残った欠陥であり、母材表面の錆・油分・水分がアーク熱で分解してガスを発生させる場合もあれば、シールドガスの流量不足で大気が巻き込まれる場合もあり、結果として丸い空洞が点在する形で現れる。 原因は単純ではない。 スラグ巻込みは、溶接中に生成されたスラグが溶接金属内に残る欠陥であり、多層盛りの際にスラグを十分に除去せず次のパスを重ねると生じやすく、被覆アーク溶接のみならず半自動溶接のMAG溶接(CO₂シールド)でも問題化する。 アンダーカットは、溶接ビード端部の母材が溶けて凹みになる欠陥であり、電流が高すぎる、アーク長が長い、運棒速度が速いといった条件で生じ、断面欠損となるため疲労強度の低下に直結する。 割れは高温割れと低温割れに分かれ、高温割れは凝固中の溶接金属が収縮拘束を受けて生じ、低温割れは冷却後に水素が関与して発生するため、高張力鋼や厚板のように拘束度が高い継手では、施工条件と材料条件の両方を見ないと実態をつかみにくい。

検査方法と判別の実務

鋳造品の内部欠陥はX線透過試験や超音波探傷試験で検出し、鋳巣は丸い黒い影、湯境は線状の影として現れ、表面欠陥は目視検査や浸透探傷試験で見つかるが、鋳造直後の検査で不合格となった鋳物は再溶解するか廃棄するしかなく、補修溶接で埋める方法もあるものの、鋳物の材質と溶接材料の相性が悪い場合は新たな欠陥を呼び込みやすい。 溶接欠陥の検査では、外観検査・浸透探傷試験・磁粉探傷試験・放射線透過試験・超音波探傷試験を組み合わせる。アンダーカットや表面割れは目視で拾いやすい。だが、内部のブローホールや溶け込み不足はX線でなければ判別しにくい。 JIS/WES溶接技能者評価試験では、2022年に104,035人が受験し80,896人が合格した(合格率77.75%)。この統計は新規と更新を含む延べ数であり、試験では外観検査と曲げ試験で欠陥の有無を評価する(出典: 日本溶接協会 https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/certification/)。 鋳造欠陥と溶接欠陥を混同する典型例は、鋳鋼製の構造物に溶接補修を加えた際の不良であり、X線で欠陥が見つかったとき、その位置が溶接ビードから離れていれば鋳造時の巣、ビード内部なら溶接時のブローホールと整理できるが、母材の鋳巣に溶接ビードが重なる場合は判別が難しくなるため、欠陥の形状が不定形か球形か、さらに深さ方向の位置がどこにあるかまで確認する必要がある。

補修方法の根本的な差

鋳造欠陥の補修は、欠陥部をグラインダーで削り取り、溶接で肉盛りする方法が一般的だが、鋳鉄や鋳鋼は溶接性が悪く急冷すると割れやすいため、予熱・後熱が必須となり、溶接材料も母材に合わせたニッケル系やオーステナイト系を選び、補修溶接後に熱処理して残留応力を除去する工程が加わることも多い。 対して溶接欠陥の補修は、欠陥部を削り取って再溶接する流れが基本であり、ブローホールやスラグ巻込みはグラインダーで除去し、溶け込み不足は開先を広げて再度溶接する。母材が炭素鋼や低合金鋼なら溶接性は比較的良好だ。もっとも、厚板や高張力鋼では予熱やパス間温度管理が必要となる。 鋳造欠陥の補修溶接は「異種材料の接合」に近く、溶接欠陥の補修は「同種材料の再接合」に近いため、同じ補修溶接という言葉で括られていても、作業の難易度、施工時間、再欠陥の出やすさには明確な差が生じる。

現場で区別が曖昧になる境界ケース

鋳鋼製のフランジに配管を溶接接合する構造物では、鋳造欠陥と溶接欠陥の境界が曖昧になりやすく、フランジ本体に鋳巣があり、その近傍に溶接ビードが走っているとX線画像だけでは判別が難しいため、このときは欠陥の深さ方向の位置と形状、さらに溶接前の母材検査記録を照合して判断する。 鋳接構造(鋳物と圧延材を溶接で組み合わせた構造)では、鋳物側の欠陥が溶接熱で顕在化することもある。鋳造時に潜在していた微小な巣が、溶接の入熱で膨張して割れに成長するケースである。起点は鋳造でも、表面化の引き金は溶接という整理になる。 原因追究では「どちらの責任か」に議論を寄せるより、「どちらの工程で検出・対策すべきか」を切り分けた方が実務は進む。 溶接で肉盛り補修した鋳物にさらに溶接を加える多層構造では、鋳造欠陥・補修溶接欠陥・本溶接欠陥の三層が重なり、このとき検査で見つかった欠陥がどの工程由来かを特定するには、各工程後の検査記録と欠陥位置の三次元座標を突き合わせるしかなく、記録が不足していれば欠陥を切り出してマクロ組織観察で溶接境界と欠陥の位置関係を確認することになる。

材料記号と規格による違い

鋳造品はJIS G 5101(炭素鋼鋳鋼品)やJIS G 5501(ねずみ鋳鉄品)などの鋳物規格で管理され、材料記号にSC(鋳鋼)、FC(ねずみ鋳鉄)、FCD(球状黒鉛鋳鉄)といった頭文字が付き、溶接構造用の圧延材はJIS G 3106(溶接構造用圧延鋼材)やJIS G 3136(建築構造用圧延鋼材)で管理され、SM(溶接構造用)、SN(建築構造用)といった記号になる。 記号の違いは、製造履歴の違いでもある。 鋳物は炭素や珪素の含有量が高く、溶接性が劣る。炭素当量が高いと硬化組織が生じやすく、溶接割れのリスクが上がる。このため鋳物に溶接する際は低水素系の溶接材料を選び、予熱温度を100〜300℃に設定する。圧延材は溶接を前提に成分調整されているため、通常の溶接条件で接合できる。 材料の違いは欠陥の出やすさにも影響し、鋳物は凝固時の収縮が大きく内部に巣が残りやすい一方で、圧延材は均質だが溶接時の入熱や冷却速度の管理を誤ると溶接欠陥が発生するため、同じ「金属の欠陥」を扱っていても、材料の製造履歴を見落とすと原因の見立てが浅くなりやすい。

設計段階で欠陥リスクを下げる考え方

鋳造欠陥を減らすには、鋳物設計の段階で肉厚を均一にし急激な断面変化を避け、押湯(湯口から最後に凝固する部分への溶湯供給路)を適切に配置して引け巣を押湯部に集中させ製品部には残さない設計にし、さらに鋳込み温度と型の通気性を管理してガス巻込みを防ぐ必要がある。 溶接欠陥を減らすには、開先形状を板厚と溶接姿勢に合わせて設計する。板厚10mm超では開先加工が必須となる。溶接金属を確実に充填できる角度と深さを確保し、継手の拘束度を下げるために溶接線を分散配置し、溶接順序も工夫して収縮応力を逃がすことが求められる。 鋳接構造では、鋳物と圧延材の境界部に溶接線が集中しないよう配置し、鋳物側に予め補強リブを鋳込んでおき溶接線を鋳物本体から離す設計にすれば、鋳造欠陥と溶接欠陥の相互作用を抑えやすくなるため、設計段階で「どこで欠陥が出やすいか」を予測し、検査しやすく補修しやすい構造へ寄せておくことが実務では効いてくる。 まずは手元の構造物が鋳物か圧延材かを材料記号で確認し、次に溶接線と欠陥の位置関係を図面に落とし込むべきである。そこまで整理できれば、次に疑うべき工程はかなり絞り込める。

出典・集計方法・最終確認日

  • 日本溶接協会「JIS/WES 溶接技能者評価試験 統計データ」(2022年)— https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/certification/

集計方法: 日本溶接協会が公表する2022年の受験者数・合格者数・方法別受験者数を引用した。本統計は新規受験者と更新受験者の延べ数であり、実際の就業者数ではない点に注意が必要だ。

最終確認日: 2026-07-07